たとえばこんなはなし

 

気が向いたら書くブログ

 

先日公開した適応障害の話( https://t.co/Z3UiwwFdQv )のおまけ。

実は今こうやってブログをつらつらと書いてるのも本当に驚くべき進歩で、当初はスマホを見ることも出来なかった。SNSでの友人たちの投稿に自分だけ時間が止まっているように感じてしまい、以前のようにチェック出来ずにLINEの返事も打てなかった。手のひらサイズの画面にびっしり映る文字の羅列が目で追えず、読むのも億劫だった。

 

スマホすら見る気力がないと、1日どうやって過ごそう?となる。テレビも色んな人がいっぺんに話していて頭の理解が追いつかなかった。文字の羅列が追えないから小説も漫画もむずかしい。20分間アニメをじっと見るのもなんだか気が乗らなかった。

抗不安薬を飲んだら眠気の副作用でそのまま寝る、というのを繰り返していたけど、味気のない毎日。気分の落ち込みがそこまでひどくない日は薬を飲まずにいたから、家事以外にすることがなく本当に手持ち無沙汰だった。

 

そんな日々を過ごす中、ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドを手に取った。

このゲームによって私の死んだような空白の毎日は一変した。

オープンワールドの広大な世界、ため息がこぼれるくらい綺麗なグラフィックの森や川、海、砂漠、湖、雪国、草原、火山。そして禍々しいハイラル城。

朝が来れば夜になって、晴れの日も雨の日も雷、雪、曇りの日もあって、自然界のすべてを楽しめる仕様に、これは本当にゲームなのか…?と、何処を見ても綺麗な景色にとてつもなく感動した。(私の中のゲームはDSで止まっている)

ゲーム開始当初はリンゴを拾ったりキノコや魚を採ったりするだけでワクワクした。そして火をおこせば料理も出来た。

どこまでも広がる世界は、どこまでも自由で、険しい崖もすべて登れるし、馬を捕まえて乗ってもいい、高い所からパラセールで飛べるし、本当になんでも出来る世界に私はいた。

 

いつの間にか私は家の中にいながら大冒険をしていたのだった。

 

朝起きて少し調子が良いと、世間のみんなは学校に行ったり仕事に行ってるのに、私はゲームをしちゃうぞ〜〜と、学生時代に仮病で休んだときの優越感に似た感覚でswitchの電源を入れた。

広大な世界のマップを手に入れるべく、まずは遠くに見える塔を目指した。その道中で100個以上ある謎解きがメインの試練の祠(ワープポイント)も探し、馬宿を見つけて目印にして、襲ってくる魔物を倒して自分の武器をどんどん強くしていった。不自然な石の下などに巧妙に隠れている妖精のコログも探した。

 

塔になんとか辿り着きマップが広がるたび、ワープポイントを見つけ試練をクリアするたび、コログを見つけるたび、私はゼルダの世界の中で小さな成功体験を何度も何度も繰り返していた。これは後から調べてみると、自尊心の回復や自信に繋がっていたらしい。

 

魔物を倒すのはなんでもアリで痛快で楽しかった。剣を振り回すのはもちろん、弓で射抜く、何回も爆弾を投げて吹き飛ばす、高いところから大きな岩を転がして当てる…言葉にするとむごいけど、まさにストレス発散だった。ゲーム初心者の私でさえも倒せた!というのも小さな喜びだった。

 

なんでも出来る自由な世界で、主人公(リンク)の100年前の記憶を思い出しながら進んでいくストーリーにもまた胸が熱くなった。ミファー、リーバル、ダルケル、ウルボザ、そしてゼルダ。大厄災の悲しいストーリーではあるが、キャラクターそれぞれの個性が魅力的で何度もムービーを見返しては感極まって泣いた。

道中にいる魔物たちもただ襲ってくるだけではなく、魔物なりの1日の生活があり、観察してみると肉や魚を焼いて食べてゲップをしていたり、火を囲んでピョンピョン踊って楽しそうに宴をしていたり、馬に乗って狩りをしていたり、夜になるとイビキをかいて就寝していた。ちょっと可愛い。まあ、そのあと不意打ちで剣を振りかざすのですが…。

 

ストーリーやマップを進めていくと、どうしても攻略がむずかしい試練が出てくる。そうするとなんだか悔しくてスマホでやり方を調べる、ということが出来るようになった。

億劫だったスマホを使うことが、文字を読むことが、自然と出来るようになったのだ。

そして次第にゲームのことを調べるだけではなく、クックパッドでレシピを見れたり、どんどん良い方向に進んでいった。日常生活を取り戻すきっかけはおそらくゲームだった。

 

ゲームは依存性があって良くないとか昼夜逆転の恐れがあるとか、今までゲームをやってこなかった人生だから悪いイメージを少なからず持っていたけれど、実際にプレイしてみると、楽しいことがひとつもない休職中の生活が、あっという間に知らない世界の自由な旅になった。

 

オードリーの若林が言っていた「ネガティブを潰すのはポジティブじゃない、没頭だ」をまさに体感した。

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、間違いなく私の人生の大冒険だった。

 

最近はモンスターハンターライズをプレイして戦闘アクションに重点を置いて楽しんでいる。ネガティブを潰すのは没頭。HRは210です。